観るものと、生活の日記

ヨーロッパ企画「平凡なウェ~イ」

ヨーロッパ企画「平凡なウェ~イ」
★★1/2


2005年2月11日14:00 於:アートコンプレックス1928

作・演出:上田誠

出演者: 石田剛太 酒井善史 清水智子 諏訪雅 中川晴樹 永野宗典 本多力 松田暢子 角田貴志 土佐和也 西村直子 山脇唯



(あら筋)

AV製作会社の男、死に勝負をかけられたチンピラ、宇宙人の記事を取材中の男、読書家と勉強家の中学生カップル、高校野球での予選敗退をひきずる青年2人、タレントにスカウトされた大学生とそのマネージャー、というやや人並はずれた9人が、ある路地で一斉にぶつかった。皆よそ見をしていたため。
ショックでか、電柱から作業員が落ちてきて、亡くなった。慌てる9人。
それぞれ責任を押し付け合おうとする。煮詰まる中、ホームレスの男や試合中のオセロ棋士に目撃される。ホームレス男はひょうひょうとして食えない。棋士は帰してもらえないで、試合に負けてしまう。
青年2人はヤクザのピストルで怪我をして、野球再開を諦めざるを得なくなる。
タレント事務所のマネージャーかと思った男は、実は臓器の闇ブローカーだった。
大学生は、服が汚れて中学生のジャージを借り、コンタクトもなくして眼鏡に変え、昔の姿に戻る。
ヤケになった棋士は男子中学生を横取り、しかし女子中学生の方とも意気投合、と何だか滅茶苦茶。
亡くなった作業員は実は泥棒で、ビルへ忍び込もうとして足を滑らせたと分かる。誰の責任でもなかったのだ。しかし ホームレス男を介して、皆何だかこれまでの生活を捨てて、道でこのまま暮らしてやれ、という気持ちになり仲良くなる。


(感想)

最初30分間もの長い映像がある意味は、あったのかなぁ。面白いとも…ほとんど思えず。1つ、兄ちゃんが中学生の弟に恋愛談義をしてやるとこだけ、ちょっと見応えありましたけど。 短めにきゅっとまとめてあったらよかっただろうか。 撮影は京都みたいだけど出演者は皆標準語。特定されないとある町でしょうか。
映像では特に筋もなく、人物紹介のよう。人の顔アップが多いのが特徴でした。
読書家の中学生が、川上弘美のエッセイ「あるようなないような」を 読んでいて(川上さんのファンだけどマイナー本なので)ちょっと驚き。

「今回って…もしや全部映像?」と不安が高まる中、スクリーンがぱっとなくなって、 舞台と映像に出演してた役者さん達が登場しました。

どこかの路地裏の写真を撮り、そのまま再現したような舞台セットは絶妙。 家の裏手につまれた鉢とか、消火器とか、つるのからんだフェンスとか、薄汚れたブロックとか…。

場面展開はなくて、「作業員が亡くなってしまった」ことで残り1時間ひっぱります。
ありえない話。一度に9名が通りがかるということは、普段から人通りのある路地のはず。そこで騒いでいて人が集まらない、というのが不自然。 道沿いの家の人さえ出てこない。いないのかな?と思いきや、窓辺に1人いたらしい。普通、窓の外見そうなものを。
しかも台所から食べ物とられちゃってるのに。「それでもバレない」とホームレス氏は言い張りますが、いくら何でもあなた。
電柱をどうにかした訳でもないのに、作業員が落っこちてきたのを 「自分達のせい」と思い込むのも、不思議な話。 それでも、パニックになったら近いことはあるのかも、と思わせました。 セリフやちょっとした動きなんかが、オカシイ。笑ってしまいます。

役者さん達、少し謎めいています。年齢もよく分かりません…。プロフィールでは 19~27歳の若者劇団みたい。でもやや中年っぽい人もいるし、中学生男子役の子は、声も高いしホントに中学生…? と思ったら、20歳近い女優さんが演じてた模様。スゴイ。 濃い職業(ヤクザとかAV製作とか)ぶりは、信憑性ないんですけど、 オセロ棋士の女性は、リアルでした。試合がダメになって悲しんだり、やけになって中学生にからんだりして。
でも全員テンポとリズムがよくって、上手かったです。

お話は後半がすきです。何やらカタギじゃない大人たちと、「これから新しい何かが始まる」と期待を抱いてた若者たち。だから ホームレス男を最初「ドロップアウトした人」扱いだったのが、ヤケついでに彼の哲学に感じ入り、 飾りや未練をとっぱらい本音をさらけだす…ってのが。そうすると狭い道にいながら 世界が逆転するんですね。といっても、一時的なもので多分前と近い場所には帰っていくのでしょうが。 多くの人が内心は「今の生活本当はヤなんだ」と思いながら生きてんのかなぁ、とか何とか思ったり思わなかったり。

ということで、映像以外は割合すきになれました。観て損するところではないんじゃないか?と思います。

全体に、華やかさとか「あの役者さんステキ」みたいなのは、ほとんどない(苦笑)ですけどね。
見た目どうこうより、性別問わず客を惹きつける魅力とか個性みたいなのが、あまり感じられなかったです。 それから「独創的!」みたいなものも。薄くも濃くもなかったです。





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